「Wan2.2 は入ったのに、思ったとおりに動いてくれない」。ここで止まっている方は多いと思います。原因はたいてい、プロンプトの書き方か、モデルと設定値の組み合わせのどちらかです。私は Mac Studio(M1 Max・メモリ32GB)で Wan2.2 TI2V-5B を回していますが、1本の生成に数分から数十分かかるので、当てずっぽうに撃ち直して当てる戦い方が使えません。
結論から言うと、プロンプトは主題・カメラ・動き・スタイルの4要素で書き、モデルは構成が単純な TI2V-5B から入るのが筋です。この記事では、少ない試行で当てるためのプロンプトの型・モデルの選び分け・ステップ数と尺の決め方を、実際に回している設定のまま整理します。
まだ環境がない方、そもそも Mac で動くのか・何分かかるのかを先に知りたい方は、ComfyUI を Mac に入れる手順とMac でローカル動画生成は実用か(Wan2.2 実測)が先です。この記事は、動く環境がある人が「何を書いて、どの数値にするか」だけに絞ります。
どのモデルを選ぶかで、設定の複雑さが決まる|5Bは1本・A14Bは2本立て
📖 この章で使う用語
- i2v(画像から動画/image-to-video):1枚の画像を起点に、それを動かして動画にするやり方。文章だけから作るのが t2v です。
- MoE(混合エキスパート):担当の違う職人を2人置いて、工程の前半と後半で交代させる仕組み。
- dense(単一モデル):職人が1人=読み込むファイルも1本で済む構成。
- GGUF/量子化:モデルを軽くした保存形式と、その軽くする度合い。Q8 は品質寄り、Q4 はさらに軽量。
- LoRA:モデルに後付けする小さな部品。ここでは「モデル本体と対応を合わせる必要がある追加ファイル」くらいの理解で先に進めます(詳しくは設定値の章で)。
最初の分かれ道はモデル選びです。ここで「1本で済むのか、2本要るのか」が決まり、あとの設定の複雑さがまるごと変わります。
| モデル | 作れるもの | 解像度 | 構成 |
|---|---|---|---|
| TI2V-5B | t2v と i2v の両方 | 720P(24fps) | 1本で完結(dense) |
| I2V-A14B | i2v | 480P / 720P | high-noise と low-noise の2本立て |
| T2V-A14B | t2v | 480P / 720P | high-noise と low-noise の2本立て |
いちばん誤解されるのがここです。A14B 系は MoE 構成で、全体のレイアウトを担当する高ノイズ側と、細部を詰める低ノイズ側の2モデルを同時に読み込みます(公式リポジトリの説明・2026-07-17取得)。
一方の TI2V-5B は、公式チュートリアルの表現を借りれば「1つのモデルが2つの中心的な役割を満たす」構成です。読み込むのは1本だけで、t2v と i2v の両方をこなします。
つまり A14B を選んだ瞬間に、モデルも LoRA も high 側と low 側で対応を合わせる作業がついてくるわけです。「2本要るらしいけど自分のワークフローは1本しか読んでいない」と混乱するなら、その原因はたいていモデル系統の取り違えです。
Mac で選ぶなら、まず TI2V-5B から
私は M1 Max で TI2V-5B に Turbo LoRA を足した構成を使っています。理由は速さより先に、構成が単純なことでした。1本で t2v も i2v もいけるので、うまくいかないときに疑う場所が減ります。
なお、公式のモデルカードには 24GB クラスの VRAM(ビデオメモリ=グラフィックボード専用のメモリ。RTX 4090 を例示)という記述がありますが、これは NVIDIA 環境を前提にした数字です。Mac のユニファイドメモリとは前提が違うので、そのまま自分の Mac に当てはめられません。メモリ帯ごとの見込みはローカル生成AIの必要スペックに分けてあります。
GGUF(軽量化された保存形式)を使う場合は、ComfyUI 側に専用ノードが要ります。この置き場や導入のつまずきはComfyUI を Mac に入れる手順にまとめました。
外さないプロンプトの型|主題・カメラ・動き・スタイルの4要素
📖 この章で使う用語
- プロンプト:AI への指示文。動画では「何が・どう撮られて・どう動いて・どんな絵か」を渡します。
- ネガティブプロンプト:出したくない要素を書いておく欄。
- Pan / Tilt / Dolly / Orbital / Tracking:カメラの動かし方の呼び名。左右に振る/上下に振る/前後に寄る引く/回り込む/被写体を追う。
私は画像生成のとき、主題・スタイル・構図・制約の4要素でプロンプトを組んでいます。動画はこの型がそのまま使えて、構図がカメラに、制約が動きに置き換わるだけでした。
つまり 主題(何が)・カメラ(どう撮る)・動き(どう動く)・スタイル(どんな絵作り) の4つです。画像側の型の中身はAI画像生成のプロンプトに書いたので、ここでは動画側の差分だけを扱います。
i2v と t2v で、4要素の配分を変える
i2v は起点の画像がすでに主題を確定させているので、主題の描写に字数を使うのは無駄になります。
- i2v:主題は一言で足りる。字数は動きとカメラに寄せる
- t2v:主題から書く。何がどこにあるかを先に確定させないと、絵が毎回変わる
起点になる1枚を先に作るなら、Mac でのローカル画像生成やQwen-Image-Edit での背景差し替えが地続きです。
カメラは「1プロンプトに1動作」
カメラの語彙は Pan / Tilt / Dolly / Orbital / Tracking あたりを覚えれば、ほとんどの場面で足ります。英語で書くほうが通りやすいので、私は英語で書いています。
大事なのは数を増やさないこと。1つのプロンプトに「まず寄って、それから回り込んで」と2つ以上のカメラ動作を書くと、どちらも中途半端になりやすく、しかもどの指示が効かなかったのかが分からなくなります。
弱い指示より、言い切る
公開されている実践情報では、80〜120語程度の長さが目安とされています。短すぎるとモデルが足りない部分を勝手に補完してしまうためです。
指示の強さも同じで、“camera pans left” より “the camera performs a deliberate, smooth pan left” のように言い切るほうが通りやすいとされています。ただし記号での重み付けが画像生成と同じように効くかは環境差があるので、そこは断定せず1つずつ試しています。
そのままコピーして使える骨格
i2v(雨の窓に寄る)の例です。
The camera performs a slow, deliberate dolly-in toward the window.
Rain streaks run down the glass, catching the warm light from inside.
Steam drifts upward from a mug on the sill, moving gently and continuously.
Cinematic, soft evening light, shallow depth of field, calm and quiet mood.
1行目がカメラ、2〜3行目が動き、4行目がスタイル。主題は起点画像が持っているので、書いていません。
t2v(文章だけから作る)ならこうなります。
A ceramic mug of black coffee sits on a wooden desk beside a closed notebook.
The camera holds a slow, steady orbital move around the mug.
Steam rises in thin, continuous ribbons; the surface of the coffee ripples faintly.
Warm morning light from a side window, soft shadows, muted color grade, film-like grain.
1行目に主題が増えただけで、構造は同じです。
なお、この型に「5秒の動画で」と書き足しても尺は変わりません。尺はプロンプトではなく設定値で決まります。
設定値と尺の決め方|ステップ数・LoRA・fps・frames
📖 この章で使う用語
- step(ステップ数):生成の反復回数。多いほど丁寧ですが、そのぶん時間がかかります。
- CFG:プロンプトにどれだけ忠実に寄せるかの強さ。
- LoRA:モデルに後付けする小さな部品。Turbo / Lightning 系は step を減らす用途です。
- fps(フレームレート):1秒あたりの静止画の枚数。24fps なら1秒に24枚。
- frames(フレーム数):作る静止画の総枚数。fps で割ると秒数になります。
ステップ数に唯一の正解はない。LoRA の有無で前提が変わる
「ステップ数はいくつが正解か」には、前提が1つ要ります。step を減らすための LoRA を足しているかどうかです。
素の状態ならある程度の step が要りますが、Turbo や Lightning といった step 削減用の LoRA を足すと 4〜6step 級で回せます。私は TI2V-5B に Turbo LoRA を足して 6step で運用しています。
なお、公開されているワークフロー解説には、LoRA を併用するときに high 側と low 側で step と CFG の範囲を分ける設定例があります。ただしこれは A14B 系の話です。1本で完結する 5B にそのまま持ち込むと、存在しない設定を探すことになります。
LoRA を足すと動きのダイナミクスが多少おとなしくなるとも言われています。待ち時間と引き換えの調整なので、好みで決めていい部分だと思います。
尺は frames ÷ fps で決まる
秒数は、プロンプトではなくフレーム数で決まります。式にするとこれだけです。
秒数 = frames(総フレーム数)÷ fps
TI2V-5B は 24fps に対応しています(公式)。fps ごとの対応はこうなります。
| 作りたい尺 | 24fps なら | 16fps なら |
|---|---|---|
| 2秒 | 48 フレーム | 32 フレーム |
| 3秒 | 72 フレーム | 48 フレーム |
| 5秒 | 120 フレーム | 80 フレーム |
ただ、実際のワークフローで見かけるのは 121 や 81 という半端な数字です。これは動画系のモデルが「4の倍数+1」枚を単位に扱う都合によるもので、24fps なら 121 フレームで約 5.04 秒になります。5秒ちょうどを狙うより、この慣習に合った枚数を選ぶほうが素直に通ります。
ここでの事故は、自分のワークフローの fps を確認せずにフレーム数だけ真似することです。配布されているワークフローには 16fps 前提のものもあり、そこに 121 と入れると 7 秒を超える動画になります。fps を先に見て、それから frames を決める順番が安全です。
解像度は 720P の縦横を選ぶだけ
TI2V-5B の 720P は 1280×704 と 704×1280 が公式の表記です。横長か縦長かを選ぶだけで、私は 704 系で回しています。
おすすめのワークフローはどれか|配布品を漁る前に公式テンプレートから
「おすすめのワークフロー」を探して配布サイトを漁る前に、結論を先に書きます。最初の1本は ComfyUI 公式チュートリアルのテンプレートが最有力です。TI2V-5B 用と A14B 用のワークフローが分かれて用意されていて、モデルファイルの置き場まで一緒に案内されるので(Comfy Docs・2026-07-17取得)、この記事で何度も出てきた「モデル系統の取り違え」がそもそも起きにくい構成になっています。
私自身は、起点画像を入れて Wan2.2 を通し保存するだけの最小ワークフローを自分で組んで運用しています(組み方の手順はMac 実測記事)。凝った配布ワークフローから入るより、最小構成で1本通してから部品を足すほうが、うまくいかないときに疑う場所が減るからです。
それでも配布ワークフローを使いたいときは、この記事の内容がそのまま検品リストになります。ダウンロードする前に3点だけ確認してください。
- モデル系統が合っているか:5B 用か、high/low 2本立ての A14B 用か。1本しか読み込まないワークフローに A14B の設定例を持ち込まない
- fps の前提はいくつか:16fps 前提の配布物に 24fps のつもりで frames を入れると、尺が想定の1.5倍になります
- LoRA 前提か素か:step 4〜6 で組まれたワークフローは Turbo / Lightning 系 LoRA が入っている前提です。LoRA なしでその step 数だけ真似ると崩れます
ここまでで「何を書くか」と「どの数値にするか」は揃いました。残るのは「その設定で何分かかるか」という別の問題で、尺と解像度を上げるほど生成時間は跳ね上がります。実測と時短の判断はMac でローカル動画生成は実用か(Wan2.2 実測)にまとめました。
もっとも、私自身もここまで来るのに、設定を1つずつ試しては待つ時間をかなり使いました。モデルの置き場からプロンプト、step、fps までを通しでたどれるレシピが手元にあれば、その試行のいくらかは省けたはずです。
思ったとおりに動かない時|プロンプト・設定・機材のどこを疑うか
うまくいかないときは、疑う順番を決めておくとラクです。私は上から順に見ます。
- プロンプト:指示が弱い/詰め込みすぎ/1プロンプトに複数のカメラ動作
- 設定:step が足りない/LoRA とモデルの系統が合っていない/frames と fps の取り違え
- 機材:メモリと速度の問題
3に当たったら、それはもう書き方の話ではありません。メモリ不足や生成時間の話はMac でローカル動画生成は実用かとローカル生成AIの必要スペックが担当です。
1回に1箇所だけ変える
Mac で回すうえでいちばん効いた作法がこれでした。1本が数分から数十分かかる環境では、プロンプトと step と fps を同時に変えると、どれが効いたのか分からないまま時間だけが溶けます。
営業時代、商談がうまくいかなかった日に「資料も話し方も訪問時間も全部変える」と、次に何が効いたのか永遠に分からなかったのと同じです。1回に1箇所。遠回りに見えて、待ち時間の長い環境ではこれがいちばん速い道でした。
よくある3つの症状
- カメラが指示と逆に動く/無視される:弱い指示を、言い切る形に書き換える。カメラ動作を1つに減らす
- 尺が思ったとおりにならない:プロンプトの秒数指定は効きません。ワークフローの fps を見てから frames を決め直す
- ループさせたい:ループはプロンプトで作るものではなく、素材の作り方とつなぎ方の話です。短い尺を作って繰り返すほうが現実的でした
スマホでは動きません
念のため。Wan2.2 は自分のパソコンの中で動かす仕組みなので、スマホ単体では動きません。スマホで完結させたいなら、ローカルではなくクラウドのサービスを選ぶ話になります。クラウド側のサービスをどう選ぶかはAI動画生成のおすすめ(Veo 主軸の勢力図)に整理しています。
作った動画を仕事で使う予定があるなら、ローカル生成AIの商用利用とライセンスも先に見ておくと安心だと思います。
ここまで作れたら、次は何になるか
型が決まってくると、出したい画がだいたい出るようになります。そこから先、人に渡す仕事にできるかを決めるのは、プロンプトの精度よりも修正1回のコストでした。ここで詰めた設定値は、その修正回数を減らすための投資でもあります。
その仕事が実際にどれくらい発注されているかは、件数として公開されています。手元の出力が納品物として通用するかを、実測と公開データで確かめるに、件数が言えること・言えないことを分けて整理しました。
よくある質問
Q1: Wan2.2 のプロンプトは日本語でもいいですか?
A. 英語で書くのが無難だと思います。共有されている作例が英語中心で、真似できる語彙が集めやすいためです。日本語の効き方には環境差があるので断定はしませんが、翻訳AIで英訳して渡す運用で足ります。
Q2: 5B と 14B、どちらを選べばいいですか?
A. 構成を単純にしたいなら TI2V-5B です。1本で t2v と i2v の両方に対応し、720P・24fps で使えます(公式・2026-07-17取得)。A14B 系は high-noise と low-noise の2モデルを同時に読み込む前提です。私は M1 Max で 5B を回しています。
Q3: ステップ数はいくつが正解ですか?
A. 唯一の正解はなく、LoRA の有無で前提が変わります。Turbo や Lightning といった step 削減用の LoRA を足せば 4〜6step 級で回せます(私は 6step)。素の状態ならもっと必要です。
Q4: おすすめのワークフローはありますか?
A. 最初の1本は ComfyUI 公式チュートリアルのテンプレートが有力です。TI2V-5B 用と A14B 用が分かれて用意されています(Comfy Docs・2026-07-17取得)。配布ワークフローを使う場合は、モデル系統(5B か A14B か)・fps の前提・LoRA 前提かどうかの3点を確認してから使うと事故が減ります。詳しくは設定値の章へ。
Q5: 何秒の動画が作れますか/尺はどこで決まりますか?
A. プロンプトに「5秒」と書いても決まりません。frames(総フレーム数)で決まります。TI2V-5B は 24fps なので 5秒なら 120 フレーム、ワークフローが 16fps なら 80 フレームです。実際は「4の倍数+1」の慣習があり、24fps では 121 フレーム(約 5.04 秒)がよく使われます。かかる時間は別の話で、実測はWan2.2 の Mac 実測記事にあります。
Q6: プロンプトが効かない時はどうすればいいですか?
A. まず指示を言い切る形に書き換え、次に1プロンプトのカメラ動作を1つに減らします。そのうえで、1回に1箇所だけ変えて試します。それでも変わらなければ設定(LoRA とモデルの系統・frames と fps)、最後に機材を疑う順番です。
営業7年から生成AIエンジニアになった aikun が、Mac Studio(M1 Max・32GB)で Wan2.2 TI2V-5B を実際に回している設定をもとに書いています。A14B 系・GGUF 版・Lightning LoRA の細部は手元で動かし込んでいないため、公式ドキュメントと公開されている解説を出典つきで整理しました。記事内容の誤りや古くなった情報のご指摘は、send@bon-bon-tools.com までお寄せください。
出典
- Wan2.2-TI2V-5B|Hugging Face(取得:2026-07-17)
- Wan2.2|Wan-Video(GitHub)(取得:2026-07-17)
- Wan2.2 ComfyUI 公式チュートリアル|Comfy Docs(取得:2026-07-17)
- Wan2.2 ComfyUI Workflow Guide|ComfyUI Wiki(取得:2026-07-17)
- Wan2.2 プロンプト完全攻略ガイド|Zenn(取得:2026-07-17)
- ComfyUI 公式リポジトリ(GitHub)(取得:2026-07-17)
関連記事
- Mac でローカル動画生成は実用か(Wan2.2 実測) — 同じ Wan2.2 を M1 Max で回した実測記事。「何分かかるか」「メモリは足りるか」はこちらです。
- ComfyUI を Mac に入れる手順とハマり回避 — 土台になる ComfyUI の導入・モデル配置・つまずき対処。
- ローカル生成AIの必要スペック(メモリ32GBの境界線) — メモリ帯別の判断マップ。機材を疑う段階になったら。
- Mac でローカル画像生成は実用か(ComfyUI×FLUX) — i2v の起点になる1枚を作る姉妹記事。
- AI画像生成のプロンプト — 本記事の4要素の型の出自。画像側の組み立て方です。
- Qwen-Image-Edit でMac背景差し替え(M1 Max 実測) — 起点画像を編集して整えたいときに。
- ローカル生成AIの商用利用とライセンス早見表 — Wan2.2 を含むモデル別の商用可否を原文つきで整理しています。