Kindle出版とAI|申告が要る分かれ目は「最初の文を誰が書いたか」

「AIで小説は書けた。でも、これをKindleで売っていいのか」。ここで止まっている方は多いと思います。調べると「AI生成コンテンツは申告が必要」と出てくる一方で、「大幅に手を入れれば自分の作品」と読める要約も混ざっていて、どちらが正しいのか分からなくなります。KDPの公式ガイドラインには、AIベースのツールで作ったものは「後で大幅な編集を行ったとしても」AI生成と見なす、と書かれています(2026-07-24 取得)。

結論から言うと、AIで書いた小説をKindleで売ること自体は禁止されておらず、分かれ目は「最初の文を誰が書いたか」の一点にある筋です。この記事では公式の原文をそのまま置いて、あなたの書き方がどちらに当たるかを自分で判定できる形にし、そのうえで申告した本がどういう取り分の形で売られるのかまでを通します。

やるのは、公式の原文の読み解きと、AIで文章を作ってきた側からの当てはめです。まだ原稿そのものが手元にない方は、ローカルLLMで小説を書く記事からどうぞ。

出せる。分かれ目は「最初の文を誰が書いたか」の一点

📖 この章で使う用語

  • KDP(Kindle ダイレクト・パブリッシング):Amazon が用意している、個人が自分で電子書籍を出せる仕組み。出版社を通さず、自分の原稿を自分でアップロードして売ります。
  • AI生成コンテンツ/AIアシストコンテンツ:KDP が公式に定義している2つの区分。前者だけ、出版の手続きの中で申し出(申告)が必要になります。
KDPのAI区分は編集量ではなく順番で決まる図。最初の文をAIが書いたならAI生成で申告が必要、自分が書いてAIが直したならAIアシストで申告不要。大幅に編集してもAI生成のまま変わらない。

先に答えを3つ置きます。

  1. 禁止ではありません。 KDPが求めているのは「出さないこと」ではなく、AI生成なら申告することです。
  2. 分かれ目は編集量ではありません。 AIが最初の文を書いたならAI生成、自分が書いたならAIアシスト。この一点です。
  3. 申告は罰ではなく開示です。 公式ページには、この申告が2023年9月7日から実施されていると記載されています。

順番が大事です。「どれくらい直せばセーフか」を考える前に、まず「最初の文を出したのは誰か」を決める。ここが決まると、あとは事務手続きになります。

一方で、この記事が扱わないことも先に置いておきます。小説の書き方そのものはAI小説の書き方へ、小説投稿サイト側の区分やルールは投稿先の規約を扱った記事へ、使ったモデル側の商用利用条件はこの記事の最後にもう一度触れます。

公式の原文で線を引く|大幅に直しても「AI生成」、対象は文章だけではない

📖 この章で使う用語

  • 申告(開示):出版の手続きの中で「この本にAI生成コンテンツが含まれるか」を答えること。良し悪しを審査されるチェック項目というより、Amazon側が把握するための質問です。

まず、AI生成の定義の原文です。

AI ベースのツールによって作成されるテキスト、画像、または翻訳として定義されます。AI ベースのツールを使用して実際のコンテンツ (テキスト、画像、または翻訳) を作成した場合、後で大幅な編集を行ったとしても、そのコンテンツは「AI 生成」と見なされます。

出典: コンテンツ ガイドライン|KDP(取得:2026-07-24)

対になるのが、AIアシストの定義です。

コンテンツをご自身で作成し、そのコンテンツ (テキストまたは画像) を AI ベースのツールを使用して編集、改良、エラーチェックした、またはその他の方法で改善した場合、そのコンテンツは「AI アシスト」と見なされ、「AI 生成」とは見なされません。

出典: コンテンツ ガイドライン|KDP(取得:2026-07-24)

申告が要るのはどちらかも、公式が名指しで書いています。AI生成コンテンツについては「お知らせいただく必要があります」、AIアシストコンテンツについては「開示不要です」——これが必要・不要の全てです(同ガイドライン、取得:2026-07-24)。

2つを並べると、区分の軸がはっきりします。どちらに転ぶかを決めているのは、編集の量ではなく順番です。AIが作ったものに手を入れたのか、自分が作ったものにAIが手を入れたのか。見ているのはそこだけです。

AI生成AIアシスト
最初の文を書いたのはAI自分
AIの役割作る直す・磨く
大幅に編集したらそれでもAI生成AIアシストのまま
申告必要(ツール名も入力)不要

一番よく誤解されているのは、たぶんここです

「AIの下書きを、ほとんど原形が残らないくらい書き直した。だからAIアシストだろう」。私も最初はそう読みかけました。ですが原文は逆向きで、大幅な編集を行ったとしてもAI生成と見なす、と明記されています。

なお、AIにアイデアやブレインストーミングを求めて、実際の文章は自分で書いた場合は、公式の説明ではAIアシストの側に入ります。相談相手として使うのと、書き手として使うのは、扱いが違うということです。

対象は文章だけではありません

定義の中には、テキストだけでなく画像と翻訳が並んでいます。つまり、本文を全部自分で書いていても、表紙や挿絵を画像生成AIで作ったなら、そこは別に考える必要があります。画像生成そのものの入口は無料で使えるAI画像生成の記事にまとめてあります。

KDPのAI生成の定義に含まれるのはテキスト・画像・翻訳の3つ。本文を自分で書いても表紙を画像生成AIで作れば別に判断が要る。自分が作ったものをAIで直したAIアシストは開示不要。

そして、申告は出版の手続きの中で聞かれます。公式の案内によると、AI生成コンテンツが含まれる場合は、使用したツール名を入力することになっています。「はい」を押して終わり、ではないということです。

自分の書き方を当てはめる|AIで小説を書いた4パターン

📖 この章で使う用語

  • ローカルLLM:自分のパソコンの中だけで動く言語モデル。クラウドのAIと違って、原稿を外に出さずに書けます。

ここが本題です。原文にあなたの書き方を当てはめると、だいたい次の4つに落ちます。

あなたの書き方最初の文を書いたのは原文に当てはめると
AIに設定を渡して本文を出させ、誤字と語尾を整えたAIAI生成
AIの下書きを、ほぼ原形が残らないまで書き直したAI大幅に編集してもAI生成
自分で書いた本文を、AIに校正・推敲させた自分AIアシスト
AIにプロットや案だけ相談し、本文は自分で書いた自分AIアシスト
AIで小説を書いた4パターンの判定図。AIに本文を出させた場合と大幅に書き直した場合はAI生成、自分で書いてAIに校正させた場合とアイデアだけ相談した場合はAIアシスト。取り違えやすいのは書き直したパターン。

引っかかるとしたら2行目だと思います。感覚としては自分の作品なのに、原文の基準ではAI生成の側に残る。ここを取り違えたまま「いいえ」と答えてしまうのが、いちばん避けたい形です。

実際にやってみると、たいていは2行目に落ちます

2026年7月9日に、自分の未公開の長編企画を素材にして、ローカルLLM(Ollama + qwen3:14b / gemma3:12b / Llama-3-ELYZA-JP-8B)で第1話・全4シーン 2,453字を、生成 → ダメ出し → リテイク → 校正まで通しで作ってみました(Mac Studio M1 Max・32GB)。

やってみて分かったのは、工程のほとんどが「AIが下書きを出す → 自分が直す」の形になるということです。直した量は少なくありません。それでも、最初の文を出したのはAIのほうでした。

これは出版の話ではなく、文章の作り方の実感として書いています。ただ、この順番になりやすいという事実は、そのまま区分の判定に効いてきます。

表紙とツール名の扱い

表紙は本文と分けて考えます。本文が自分の手書きでも、表紙を画像生成AIで作れば、そちらは定義上のAI生成に当たり得ます。

ツール名の欄には、使ったものを正確に。クラウドのサービスを使ったならサービス名、ローカルで動かしたなら使ったツールとモデル名になります。

迷ったときの原則は1つだけです。編集量で判断しない。 そのうえで判断がつかないときは、公式のヘルプの記載に従ってください。この記事は原文の読み解きであって、Amazonの判断を代弁するものではありません。

なお、小説投稿サイトにある年齢区分やAI利用の申告と、KDPのAI申告は別物です。出し先ごとにルールが違う話は投稿先の規約の記事にまとめてあります。

申告したその本は、いくらの形で売られるのか|35%と70%の分かれ目

📖 この章で使う用語

  • ロイヤリティ:売れたときに著者が受け取る取り分の割合。書店でいう「取り分の決め方」に近いものです。
  • KDPセレクト:KDPの登録オプションのひとつ。日本で70%を選ぶ条件になります。
  • 配信コスト:電子書籍のファイルを読者に届ける費用として、70%を選んだときに差し引かれるもの。

いくら売れるかの話はしません。ここで扱うのは、取り分がどう決まるかという構造だけです。

KDPのロイヤリティ比較図。35%は全販売地域で選べ配信コストの控除なし、70%は販売地域が限定され1MBあたり1円の配信コストが引かれ、日本ではKDPセレクトへの登録が条件。AI申告とロイヤリティは別の欄。

公式のロイヤリティのページには、次のように整理されています(取得:2026-07-24)。

  • 35% は、全販売地域で選べます。
  • 70% は、販売地域が限定されます(日本は含まれます)。そこから配信コストが差し引かれ、Amazon.co.jp の配信コストは1MBあたり1円、最低1円です。
  • 日本で70%を選ぶには、KDPセレクトへの登録が条件になります。
  • 日本では、10MB以上の書籍には配信コストが適用されない、という記載もあります。

つまり「70%のほうが得」と単純には言えません。地域が絞られ、ファイルサイズに応じた費用が引かれ、KDPセレクトに登録するという別の選択もついてきます。

そのKDPセレクトは、公式には「Kindle 本専用の無料プログラム」と説明されています。登録すると本がKindle Unlimitedの対象になり、読者が初めて読み終えたページ数に応じた分配金や、オールスターボーナス、期間限定の値引き・無料キャンペーンといった仕組みが使えるようになります(KDP セレクトの利点、取得:2026-07-24)。どちらが向くかは、本の中身とサイズと売り方で変わります。

そして、ここは分けて覚えておくと安心です。AI生成の申告と、ロイヤリティの選択は別の欄の話です。申告したから取り分が下がる、という仕組みではありません。取り分の計算式は、申告の有無ではなく上の条件で決まります。

ここまでで決まるのは「出せる形かどうか」までです。使ったモデル側の商用利用条件は、Amazonの規約とはまた別のレイヤーにあります。そちらはローカル生成AIの商用利用とライセンスの記事に、モデルごとの原文と取得日をまとめました。

同じ「その出力は納品物として通るか」という型で動画を扱ったのがAI動画は副業として成立するかの記事です。題材は違いますが、確かめる順番はよく似ています。

よくある質問

Q1: AIで書いた小説をKindleで出すのは禁止されていますか?

A. 禁止ではありません。KDPはAI生成コンテンツについて、出版の手続きの中で申告するルールにしています(コンテンツ ガイドライン|KDP・取得:2026-07-24)。出せるかどうかではなく、申告するかどうかが変わります。

Q2: AIの下書きを自分で大幅に書き直したら「AIアシスト」になりますか?

A. 公式の定義では、AIベースのツールで実際のコンテンツを作った場合、後で大幅な編集を行ったとしてもAI生成と見なされます。判定は編集量ではなく、最初の文を誰が書いたかで決まる読み方になります。

Q3: 表紙だけをAIで作った場合はどうなりますか?

A. 定義には画像も含まれています。本文と表紙は分けて考える必要があります。

Q4: ローカルLLM(Ollama など)で書いた場合、ツール名には何を書けばいいですか?

A. 申告では使用したツール名を入力することになっています。クラウドならサービス名、ローカルなら使ったツールとモデル名を正確に書くのが素直です。最新の指示は公式ヘルプと申告時の案内にあるので、そちらに合わせるのが確実です。

Q5: ロイヤリティは何%になりますか?

A. 35%と70%があります。70%は販売地域が限定され、配信コスト(Amazon.co.jp は1MBあたり1円・最低1円)が差し引かれます。日本で70%を選ぶにはKDPセレクトへの登録が必要です(ロイヤリティ|KDP・取得:2026-07-24)。

Q6: AI生成の申告をすると、ロイヤリティは下がりますか?

A. 申告とロイヤリティは別の欄の話です。取り分は、申告の有無ではなく、35%か70%かの選択・販売地域・配信コスト・KDPセレクトへの登録で決まります(ロイヤリティ|KDP・取得:2026-07-24)。売れ行きや審査への影響は、この記事では扱っていません。


関連記事


出典

  • コンテンツ ガイドライン|KDP(取得:2026-07-24)— AI生成/AIアシストの定義、申告の実施(2023年9月7日)、使用ツール名の入力
  • ロイヤリティ|KDP(取得:2026-07-24)— 35%/70%、配信コスト(1MBあたり1円・最低1円)、日本で70%を選ぶ条件、10MB以上の扱い
  • KDP セレクトの利点|KDP(取得:2026-07-24)— KDPセレクトの位置づけと、登録すると使えるようになる仕組み

営業7年から未経験でエンジニアに転じ、いまは生成AIを業務で扱っている aikun が、KDP公式の原文と、自分でAIに文章を書かせた手元の記録をもとに書いています。記事内容の誤りや古くなった情報のご指摘は、send@bon-bon-tools.com までお寄せください。

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